「ドラマー」はとても興味深い作品ではなかったでしょうか。
舞台は香港と台湾。香港パートでは黒社会の暴力的な父親:
梁家輝(レオン・カーファイ)と子どもたちとの確執。獣医である姉を
何超儀(ジョシー・ホー)が、母を見放した父親に反発する弟を
房祖名(ジェイシー・チェン)が演じています。台湾パートでは山奥で太鼓の修行をする集団の精神世界におかれたジェイシーと修行の先輩である
李心潔(アンジェリカ・リー)の出会い。ジェイシーを見守る父親の手下役が
張耀揚(ロイ・チョン)です。
香港:台湾、都会:自然、色と欲:禅の心…すべてが対照的でした。 上映前に行われた
トークイベントの後半には急遽ジェイシーも参加。こういうのが
フィルメックスの真骨頂(笑)。何も知らずに集まった映画ファンは大喜びです。
監督、プロデューサーの
ロサ・リーさん(紹介されませんでしたが、監督の奥さんのはずです)にプログラム・ディレクターの
市山尚三さんがいろいろ質問します。
香港と台湾とドイツの合作という珍しい形について、今回は来日しなかった台湾人プロデューサーの紹介でドイツからも資金が調達できて、それゆえポストプロダクション(編集と音楽)をドイツ(&スイス)で行い、香港なら下手をすれば2週間で終わるポスプロがヨーロッパ式に9週間もかかってまいった、という話(笑)など。
監督が香港人(カナダ国籍)なのに台湾政府の資金援助が得られたのは、プロデューサーが台湾人だったから。(monical補足:資金の7割は香港から出ていて、そのうちのいくばくかは香港政府の援助です)
左:ロサ・リーさん 中:FILMEXのために製作された日本語入りポスター 右:ケネス・ビー監督 台湾の山中ロケで1ヶ月滞在したジェイシーは「自然を楽しんだのは最初の2日だけで、あとはどうしようかって感じだった(爆)。とにかく蚊やハエがすごくて世界中の蚊が集まったみたい(再爆)」。

all photo by monical このトークイベントや舞台挨拶、上映後の監督のQ&Aはテープ起こしが出来ていませんので後日ということにさせていただいて、お昼のジェイシーへの個別インタビュー、トークイベント、舞台挨拶を総じてmonicalが持った印象を。
いい意味でも悪い?意味でも
「ゆるい」(爆)。
育ちのよさというか、
おおらかで常に
ニコニコ、フニャフニャ。シャイなのかずっと
伏し目がち。
日ごろの修行を映画の中にそのまま持ち込んだ
Uシアターの人たちのあのストイックな暮らしぶりがドキュメンタリーの方式で組み込まれている台湾ロケで、さぞいろいろ
影響を受けて成長のきっかけを掴んだろう、
「とてもたくさんのことを考えさせられた」という反応を期待していたんですが“ヘラヘラ”(笑)。だがしかし、それは照れ笑いのヘラヘラ、彼のキャラクターなのだろうと思ってあげることに。まだ日本での質問に慣れていないですからね。そりゃ、日本のマスコミ慣れしている謝霆鋒(ニコラス・ツェー)や余文樂(ショーン・ユー)のようにはいきませんわな。
それにしても監督の言葉のはしばしに
「シンジェ(アンジェリカ・リー)は役作りに没頭していたが、ジェイシーはどうも納得いかないことが多かったようで」と苦笑いのニュアンス。でも
彼には天性の勘のよさがあるとフォロー(爆)。
その
天性の素質をどうも本人が気づいていないフシがあります。
『ツインズイフェクト 花都大戦』「早熟」《太陽再次升起》「男児本色」「ドラマー」と、新人なのに1作1作違うタイプの作品で違うタイプの役を演じ、その都度、
ラブシーンとか(早熟)
アクションとか(男児本色)とか
太鼓とか(ドラマー)新しいことに挑戦しているのに、
ちっとも「大変だった」という様子がないんです。スルスルスルーってこなしている感じ。本人はそう言われたくないと思いますが、さすが“カエルの子”です。あの、いつもニコニコというのも父親譲りじゃないでしょうか。ルックスはお父さんよりノーブル。でも見れば見るほど、若い時の
成龍(ジャッキー・チェン)に似ていました。
さて映画本編のmonicalの第一印象ですが・・・
●
梁家輝(レオン・カーファイ)は
『エレクション』まんまのキャラじゃないのー(監督の撮影日誌によれば、それが嫌でカーファイさんは最初“黒社会のボスはやりたくない、太鼓の師匠ならやる”と。でも本物のプロ集団でそりゃあ無理だと監督が説得)
●最近の
何超儀(ジョシー・ホー)はどんどんよくなってるな(結婚してきれいになったな)
●わー、
張耀揚(ロイ・チョン)の出番が多い~(笑)。え、でもやっぱり最後は裏切り者かよ(爆)
●それにしても
Uシアターのあのストイックさは何なんだ。嵐姐を演じた
劉若瑀(リウ・ルオユー)の迫力はホンマもんだ。こわっ。
●陳果(フルーツ・チャン)監督の『ロンゲスト・サマー(去年煙花特別多)』の音楽担当からスタートした監督。
「ライス・ラプソディ」と本作がまったくテイストが違うことにも驚き。
●本物のアーティストたちの修行の中にアイドル・スターの“役”をはめこんだ興味深い作りが独特でいい感じ。
●そのストイックな修行に
李心潔(アンジェリカ・リー)のいい意味での固い印象がピッタリ。
●香港パートはアップ(と暴力:笑)が多くて迫力勝負、台湾パートは引きのショットが多くて静けさと太鼓のボディソニックな音で精神性勝負。うまい。
●上映後のQ&Aで坊主頭に抵抗したジェイシーが変わった瞬間というのをしっかり観察していた監督の言に“さすが監督だなぁ”と。
今のところはそんな感じです。
トークイベントと舞台挨拶の模様はPart2で。
えっと明日は…
李康生(リー・カンション)監督作。いつもどおりエキセントリックなんでしょうね(笑)
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safraさん
というのは、やはりロジックやナラティブの異なる映画が、日本で受け入れられることが非常に大切な事であると思うからです。
ハリウッド式の「全世界市場仕様」じゃなく、アジアの同胞の雰囲気を感じられる機会は、実は非常に狭く少ない。しかし、一度触れれば大げさに言うと「血が呼ぶ」様に、その文脈を感じて解くことが出来る。…カンヌやヴェネチアに認められたからではなく、日本人が読み解ける異邦の映画としての距離が、物凄く貴重だと思うのです。「アイ・イン・ザ・スカイ」には、年若い映画友達を引っ張って行きました。予備知識なしでも十全に楽しんでもらえたようです。
近くて異なる文化文脈に触れる事で、自国の文化の立ち位置にも思いを致せる、そんな機会としてフィルメックスや東京国際、そして数々の映画祭に感謝、です。
悠さん
恭喜!!!
素晴らしいです。さぞ両監督もうれしいことでしょうね。
これで公開時期が早まることを期待しています。