【データブック】人名表記のこと
【 My Works 私のお仕事】
13年ぶりの「中華電影データブック」で、
これまでのデータブックにはなかった項目があります。
巻末の「さくいん」です。作品と人名が引けます。
不備はあると思いますが、それなりに役立つツールになっていると
スタッフ一同自負していますがいかがでしょう。
日本における中国語圏の人名表記/読み方に決まった形は存在していません。
だから媒体によって、会社によって、執筆者によって
それぞれに違った表現をされちゃっている俳優や監督がいるわけです。
そもそもの漢字表記ですら、
「現地主義」で行くのか日本で使われている漢字をあてるのか、
という問題にまずぶち当たります。
元々日本に存在しない漢字であれば外字を作る以外に選択の余地がないし
日本の画数が多い旧漢字(樂とか學とか榮とか)なら読解可能だから使えます。
が、たとえば「麦=麥」「荘=莊」のような微妙な字をどうするか・・・。
本当のことを言って、これについては最後まで結論は出ず、ほぼ執筆者の判断が反映されています。
次にカタカナ表記。
1:現在広く通用している中国人監督や俳優の名は、明らかに誤まったカタカナ表記であるものがけっこうある。
2:台湾の監督や俳優は台湾語の読み方と北京語の読み方がある。
3:東南アジアの華僑は読み方も様々である(福建語など)。
4:香港の監督・俳優の英語名は、いつのまにかすっかり違うものになっていることが多々ある。
これらを考えると、そこそこ日本で認知されている人々については踏襲し、
まだあまり知られていない人は監修者たちのこだわりを反映させちゃおう!という策略(笑)。
そこそこ知られている人の名を今までと違うカタカナ表記をしたら、
さくいんで引けなくなる可能性が出てくるし、
今まで慣れ親しんだ名前に違和感を抱かせてしまうのも罪ですし(笑)。
謝霆鋒(ニコラス・ツェー)→ 本当はニコラス・チェに近いけれど。
奚仲文(ハイ・チョンマン)→ 9割の作品の英語表記はハイではなくイー(Yee)だけれど。
これは香港より中国の人たちが深刻な問題でした。
中国の監修をされた水野さんによれば、外国の映画祭などのアルファベット表記を
北京語を知らないジャーナリストが現地からいちはやく記事にした時の英語読みが
間違ったまま使われてしまっているのかも知れない、ということです。
これも、間違っていてもすでに認知されてしまっている人の名は踏襲ということになった模様。
そこで「踏襲」について。
たとえ過去の資料や表記に疑問があるにしても、
配給会社やソフト会社に敬意を払うことも必要ではないか、
という考え方が一方にはあるわけです。
たとえば、ショウ・ブラザース。
ブラザー(brother)の複数形は正確な発音で言えば「ブラザーズ」です。
しかしDVDの日本発売に際して絶大なる貢献をしてくれたキングレコードでは
ショウ・ブラザー[ス]をオフィシャルに採用していますから、それに倣いました。
実際、少なくとも10回に及んだ校正作業では、スにしたりズにしたりを繰り返して真っ赤っか(苦笑)。
で、最後に私が「ス」に統一したつもりですが、見逃しもあるかもしれません。ごめんなさい。
思い入れが強い杜峰監督の場合ですが、
ジョニー・トー、ジョニー・トゥ(To の英語読みをしちゃったと思われる)、ジョニー・トゥーと
見事に会社?によって表記が違いまして
これはmonicalとしては、広東語発音に近い「トー」にさせていただきました(笑)。
香港の人名に関していちばん象徴的なのは張學友ではないでしょうか。
アジア系カルチャー誌の先駆的存在POP ASIAでは「ジャッキー・チョン」と表記していました。
(脱線しますが、monicalが初めてPOP ASIAに書かせてもらった原稿は
15年くらい前の彼の香港コロシアムコンサート・ルポだったなぁ…遠い目)
それがたぶん日本版CDがリリースされたあたりから「ジャッキー・チュン」になり
それをきっかけにチュンがオフィシャルに採用されることになったような気がします。
広東語読みに近いチョン、北京語読みのチャンならまだしも、
チュンに違和感をずっと持っていたファンはきっと多いことでしょう。
「歌神」として中国語圏で圧倒的な知名度を誇っている彼ですが、
映画ありきの日本での知名度は残念ながら低いのをいいことに(笑)、
この際「チョン」で広めましょうと担当執筆者と合意:笑(って、広まるのか?:爆)。
ただし、すべての原稿でそれが統一するまでには至っていません。
特に巻末の作品さくいんに登場するキャストのデータは、
配給・ソフト会社の資料を基本に作成しているのでチュンのままだったりします。
英国領だった香港に特有の英語名は「学校の担任がつける」と言う話もあるほど、ある種いい加減なもの(爆)。
アルファベットの綴りはメチャクチャだわ、いったいどこの国の名前やねん、という読むに読めない(何語でググっても出てこない)不思議な名前はあるわ、「飽きたから変えました」はあるわ・・・
現在は違う英語名を使っていると判明しても、
日本で過去紹介された名前で探せるようにしないと、索引の意味がありません。
いくつもの呼び名で定着している人は極力注意しましたし、人物紹介の原稿に付記しています。
ちなみに惠英紅/恵英紅(クララ・ウェイ)という女優さんは、かつて日本ではベティ・ウェイと紹介されていました。
クララとベティの二つの呼び方があるらしいことはファンの間では次第に浸透していきましたが、
しばらく映画界から離れて数年前にカムバックしてからの作品のタイトルロールには
クララもベティも登場せず、確か中国語読みのアルファベット表記になっていると思います。
でも日本じゃやっぱりクララ・ウェイでしょ。というのは監修者水田の独断だったりします(すみません)。
と、例を挙げたらきりがないのですが、そういう悩みを抱えつつの「データブック」9ヶ月間だったことを、
皆さんにご理解いただければと思います。
次回は香港の人や作品の選定について。いったいどれだけ涙を飲んだことでしょう!
(今でも「やっぱり入れるべきだった…」と思う人は何人かいます)
書き始めたらきりがなくなって長文になりました。
ここまでお読みくださった皆様、ありがとうございました。
これまでのデータブックにはなかった項目があります。
巻末の「さくいん」です。作品と人名が引けます。
不備はあると思いますが、それなりに役立つツールになっていると
スタッフ一同自負していますがいかがでしょう。
日本における中国語圏の人名表記/読み方に決まった形は存在していません。
だから媒体によって、会社によって、執筆者によって
それぞれに違った表現をされちゃっている俳優や監督がいるわけです。
そもそもの漢字表記ですら、
「現地主義」で行くのか日本で使われている漢字をあてるのか、
という問題にまずぶち当たります。
元々日本に存在しない漢字であれば外字を作る以外に選択の余地がないし
日本の画数が多い旧漢字(樂とか學とか榮とか)なら読解可能だから使えます。
が、たとえば「麦=麥」「荘=莊」のような微妙な字をどうするか・・・。
本当のことを言って、これについては最後まで結論は出ず、ほぼ執筆者の判断が反映されています。
次にカタカナ表記。
1:現在広く通用している中国人監督や俳優の名は、明らかに誤まったカタカナ表記であるものがけっこうある。
2:台湾の監督や俳優は台湾語の読み方と北京語の読み方がある。
3:東南アジアの華僑は読み方も様々である(福建語など)。
4:香港の監督・俳優の英語名は、いつのまにかすっかり違うものになっていることが多々ある。
これらを考えると、そこそこ日本で認知されている人々については踏襲し、
まだあまり知られていない人は監修者たちのこだわりを反映させちゃおう!という策略(笑)。
そこそこ知られている人の名を今までと違うカタカナ表記をしたら、
さくいんで引けなくなる可能性が出てくるし、
今まで慣れ親しんだ名前に違和感を抱かせてしまうのも罪ですし(笑)。
謝霆鋒(ニコラス・ツェー)→ 本当はニコラス・チェに近いけれど。
奚仲文(ハイ・チョンマン)→ 9割の作品の英語表記はハイではなくイー(Yee)だけれど。
これは香港より中国の人たちが深刻な問題でした。
中国の監修をされた水野さんによれば、外国の映画祭などのアルファベット表記を
北京語を知らないジャーナリストが現地からいちはやく記事にした時の英語読みが
間違ったまま使われてしまっているのかも知れない、ということです。
これも、間違っていてもすでに認知されてしまっている人の名は踏襲ということになった模様。
そこで「踏襲」について。
たとえ過去の資料や表記に疑問があるにしても、
配給会社やソフト会社に敬意を払うことも必要ではないか、
という考え方が一方にはあるわけです。
たとえば、ショウ・ブラザース。
ブラザー(brother)の複数形は正確な発音で言えば「ブラザーズ」です。
しかしDVDの日本発売に際して絶大なる貢献をしてくれたキングレコードでは
ショウ・ブラザー[ス]をオフィシャルに採用していますから、それに倣いました。
実際、少なくとも10回に及んだ校正作業では、スにしたりズにしたりを繰り返して真っ赤っか(苦笑)。
で、最後に私が「ス」に統一したつもりですが、見逃しもあるかもしれません。ごめんなさい。
思い入れが強い杜峰監督の場合ですが、
ジョニー・トー、ジョニー・トゥ(To の英語読みをしちゃったと思われる)、ジョニー・トゥーと
見事に会社?によって表記が違いまして
これはmonicalとしては、広東語発音に近い「トー」にさせていただきました(笑)。
香港の人名に関していちばん象徴的なのは張學友ではないでしょうか。
アジア系カルチャー誌の先駆的存在POP ASIAでは「ジャッキー・チョン」と表記していました。
(脱線しますが、monicalが初めてPOP ASIAに書かせてもらった原稿は
15年くらい前の彼の香港コロシアムコンサート・ルポだったなぁ…遠い目)
それがたぶん日本版CDがリリースされたあたりから「ジャッキー・チュン」になり
それをきっかけにチュンがオフィシャルに採用されることになったような気がします。
広東語読みに近いチョン、北京語読みのチャンならまだしも、
チュンに違和感をずっと持っていたファンはきっと多いことでしょう。
「歌神」として中国語圏で圧倒的な知名度を誇っている彼ですが、
映画ありきの日本での知名度は残念ながら低いのをいいことに(笑)、
この際「チョン」で広めましょうと担当執筆者と合意:笑(って、広まるのか?:爆)。
ただし、すべての原稿でそれが統一するまでには至っていません。
特に巻末の作品さくいんに登場するキャストのデータは、
配給・ソフト会社の資料を基本に作成しているのでチュンのままだったりします。
英国領だった香港に特有の英語名は「学校の担任がつける」と言う話もあるほど、ある種いい加減なもの(爆)。
アルファベットの綴りはメチャクチャだわ、いったいどこの国の名前やねん、という読むに読めない(何語でググっても出てこない)不思議な名前はあるわ、「飽きたから変えました」はあるわ・・・
現在は違う英語名を使っていると判明しても、
日本で過去紹介された名前で探せるようにしないと、索引の意味がありません。
いくつもの呼び名で定着している人は極力注意しましたし、人物紹介の原稿に付記しています。
ちなみに惠英紅/恵英紅(クララ・ウェイ)という女優さんは、かつて日本ではベティ・ウェイと紹介されていました。
クララとベティの二つの呼び方があるらしいことはファンの間では次第に浸透していきましたが、
しばらく映画界から離れて数年前にカムバックしてからの作品のタイトルロールには
クララもベティも登場せず、確か中国語読みのアルファベット表記になっていると思います。
でも日本じゃやっぱりクララ・ウェイでしょ。というのは監修者水田の独断だったりします(すみません)。
と、例を挙げたらきりがないのですが、そういう悩みを抱えつつの「データブック」9ヶ月間だったことを、
皆さんにご理解いただければと思います。
次回は香港の人や作品の選定について。いったいどれだけ涙を飲んだことでしょう!
(今でも「やっぱり入れるべきだった…」と思う人は何人かいます)
書き始めたらきりがなくなって長文になりました。
ここまでお読みくださった皆様、ありがとうございました。
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- テーマ:[☆.。.:*・゚中国・香港・台湾映画゚・*:.。.☆]
- 23:19
- 【My Works 私のお仕事】
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中華電影データブック 完全保存版
大事に読ませてもらいます。
分厚いので、少しずつですけど・・・(笑)